日本の医療保険制度では 65歳から 74歳を前期高齢者、75歳以上を後期高齢者と区分している。寿命が延びたとは言っても 70歳を超えれば立派な高齢者であり、活動も衰えるのが大方と実態であろう。ところが老いてふたたび児になるどころか、老いて益々盛んな人たちがいる。
先のブログで 96歳の現役日本画家堀文子さんの生き方について書いた。70歳を超えてからアマゾン、マヤ、インカを訪ねてスケッチを重ね、82歳で幻の高山植物ブルーポピーを求めてヒマラヤを走破し、名画に仕上げた。70歳を超えて筆致が衰えるどころかますます迫力を増すのは、どこからエネルギーが出てくるのかと思う。
同じような画家がいる。江戸中期に活躍した伊藤若冲である。力強い筆致、大胆な構図、繊細極まりない精緻な書き込み、独特の作風の中に有り余るエネルギーを感じる。その活動は 80歳を超えても衰えることなく晩年まで作品を作り続けた。
もう一人、葛飾北斎も同じように 70歳を超えた頃からの作品がすごい。代表作の富嶽三十六景が発表されたのは 70歳代に入ってからだ。この頃の作品は量、質ともに凄みがある。小布施の岩松院にある天井画、八方睨み鳳凰図は亡くなる少し前頃(88歳の頃)に描かれたものとされているが、とてもそうは思えない迫力と力強い色彩である。
これは画家の世界に限ったことではなく、音楽や文芸、芸能などの分野にも 80歳代、90歳代で現役の方がいる。もちろん芸術の世界ばかりではなく、優れた経営者や研究者にも権威だけを振りかざす「老害」ではない 80歳代、90歳代の方がいらっしゃる。個体差はあるにしても誰しも肉体的な老化や衰弱は避けられない。にもかかわらず 70歳を超えても輝かしい活動と足跡を残す人たちがいる。それは内なるエネルギーなのか、それともピュアな精神が生む湧き水のような力なのか?体験して知りたいものである。
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